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灰燼の連盟との偶発的な接触
エリディアムに向かう道中の荒野、アレクサンドルたちは、思いがけず武装した集団と遭遇した。旅の疲れを感じていた一行が立ち止まると、集団の先頭に立つ黒髪の女性が、静かにこちらを見据えていた。彼女の眼差しには鋭さと冷静さが宿り、その場の緊張感を一層高めていた。
アレクサンドルは仲間に目配せをし、冷静な表情で女性に問いかけた。「ここで何をしている?この道は通行人が多い場所じゃないだろう」
黒髪の女性は少し目を細め、無言のまま一行を観察する。彼女の視線が一人一人に注がれた後、静かに口を開いた。「通行人など珍しい場所で、ずいぶん軽装に見えるが……ここに何の用がある?」
リディアは軽く肩をすくめ、同じように女性を見返した。「私たちもただの通りがかりよ。少し遠回りしてエリディアムへ向かっているだけ」
彼女の背後に控える数人の仲間たちは、手に武器を握り、警戒の態勢を崩さなかった。その異様な雰囲気に、エリオットがそっとアレクサンドルの隣に近づき、小声で囁いた。「もしかして……この人たち、噂に聞く『灰燼の連盟』か?」
カリスが低く息をつき、エリオットの言葉に頷いた。「まさか、こんなところで出会うとは思わなかったが、雰囲気は確かにそれっぽいな」
アレクサンドルは仲間たちのささやきに耳を傾けながら、再び黒髪の女性に目を向けた。「灰燼の連盟か……噂には聞いたことがある。君たちがその組織の者なら、私たちは敵ではない」
黒髪の女性は微かに口元に笑みを浮かべた。「噂がどれだけ真実か……知ることができるのかは、お前たち次第だがな」
そう言うと彼女は、あえて距離を詰めず、わずかな沈黙を置いて仲間たちに何かを合図した。周囲の緊張が徐々に緩むと、アレクサンドルはふと冷静に彼女に問うた。「道を同じくする必要がないなら、無駄な争いは避けたい。だが、なぜここに?」
彼女は少し頷き、視線を遠くに向けた。「私たちも、目的があるのさ。ただ、お前たちの邪魔をする気はない。ここでの道が交わるかどうか、それだけだ」
リディアが一瞬、ため息をつくように呟いた。「道が違っても互いに干渉しないなら、これ以上言うことはないわ」
女性はアレクサンドルたちに最後の一瞥を投げ、仲間とともに荒野の奥へと消えていった。
彼女たちが去った後、リディアが静かに言葉を漏らした。「信念がぶつかるようなことがなければいいけど……」
アレクサンドルは彼女の言葉に応えるように頷きながら、「いずれ道が交わることになれば、その時は冷静でいることが試されるだろう」と静かに言った。灰燼の連盟との接触がもたらすものが、この先の道に何を意味するのか、誰もまだ知らなかった。